せっせと漁りましょう!

はじめまして、春樹さん。
僕は、レコード屋さんが大好きです。暇な時は、1日に3度くらい同じレコード屋さんに行くこともあります。そんな時は、上着を脱いでみたり、サングラスをかけたりして、店員さんに「また、来たよ」と思われないように、いろいろと工夫をします。まあ、ばれてはいると思いますが。なぜ、1日に何度も行くかと言いますと、僕の知らない間に、僕に聴かれるべき素晴らしい、かつ激安のレコードが、お店に出てすぐに誰かに買われてしまうかもしれない、という強迫観念に襲われることが、月に何度かあるからです。また、僕は、安くて素敵なレコードを探しているのであり、高くて貴重なレコードにはあまり興味はないのです。レコード屋さんの100円盤コーナーや古道具屋の店頭の箱の中に、僕に買われるべきレコードを見つけ、家に帰って聴いてみたら大当たりだった時のあの喜びを、春樹さんなら分かってもらえますよね。奥さんからは、「はいはい、今日も縄張りの見廻りね」とバカにされていますが。
(円盤小僧、男性、49歳、ミュージシャン)

僕はレコードをよく買いますが、よく売りにもいきます。けっこう前のことですが、二百枚くらいまとめてジャズのレコードを処分したことがあります。車に積んで持っていって、引き取ってもらいました。そのとき「村上はけっこうお金に困っているらしい」という噂が流れたみたいです。いや、お金に困っているんじゃなくて、置き場所がなくなってきただけだったんですが。

僕は一度スウェーデンを車で旅していて、田舎のドライブインに入ったら、その隅にLPレコードの詰まった段ボール箱が置いてありまして、売り物らしいんだけど、見るとほとんどがジャズのLPで、ゲッツのメトロノーム盤オリジナルなんかがうようよあるんです。「おお、これは!」と一瞬狂喜乱舞したんだけど、よく見ると中身はぼろぼろで、とても買う気にはなれず、がっかりしました。ふん、ぬか喜びさせるなよな、とか思いますよね。でも街道沿いのドライブインで中古レコードを売っている国もあるんだ、と感心しました。

これからもお互い、100円盤コーナーをせっせと漁りましょう。

村上春樹拝