クロさんに似た人生を歩んでいます

村上さんこんにちは。
恵里と申します。名古屋市出身で愛知県立芸術大学を卒業して、今はフィンランドで音楽家として生活しています。
ただの偶然だと思うのですが、『多崎つくる』のクロさんの設定が私にとても似ていたので、読んだ時非常に驚きました。(もちろん美術と音楽の違い、漢字の違いなど異なる点も多々ありますが)。多分この設定にこれほど当てはまるのは私だけだと思います。
えりという名前は確かにこの世代に多い名前ですが、どのようにしてこの話を設定されたのでしょうか(既にそれについて執筆されていたらすみません。)
(恵里、女性、32歳、音楽家)

そうですか。名古屋市出身で愛知県芸大を卒業して、今はフィンランドに住んでおられるエリさんなんだ。たしかに設定がすごくよく似ていますよね。もちろん偶然なのですが、そういうことってけっこうよくあるんです。僕は小説を書きながら、いろんな登場人物の設定を自由に考えていくんですが、そこで適当に思いついたことが現実に酷似しているということがちょくちょく起こります。それで「私をモデルにしたのだろう」と言われることもしばしばあります。でも本当に偶然なんです。安西水丸さんは僕の似顔絵について、「僕の絵が村上さんに似ているんじゃなくて、村上さんが僕の絵に似てくるんだよ」とよくおっしゃっておられました。自然が芸術を模倣するというか。ひょっとしてそれと同じようなことかな。現実とフィクションって、合わせ鏡のようなものかもしれません。

フィンランドの生活はいかがですか? 僕はシベリウスのピアノ音楽ってわりに好きで、よく聴いています。グレン・グールドの弾くシベリウスって、心底透徹していますよね。

村上春樹拝