勇気って、人にもらうものなの?

村上さんの本はすべて愛読しておりますが、メールをお送りするのは今回が初めてで、少し緊張しております。
ところで、最近テレビなどで「勇気をもらう」という表現をよく耳にします。私は、この表現を聞くと、ついテレビに向かって「勇気は人にもらうものじゃないでしょ、自分の中から湧くんでしょ」などと、声を出して突っ込んでしまっていました。しかし、よくよく考え、「勇気をもらった」という表現が一般的になったという事は、私にはピンと来ないけれども、多くの人が勇気をあげたり、もらったりしてると感じてるということなのではないか、と考えるようになりました。
村上さんは、小説を書くことによって勇気をあげたり、又はもらったりという感覚を持っておられますか? 
(しゅうか、女性、47歳、主婦)

そうですね。たしかにちょっと気になる言葉ですね。僕もあまり好きではありません。そんなに簡単に勇気をもらったり、あげたりするものじゃないですよね。勇気というのは力を振り絞って、奥の方から引き出してくるものですよね。あるときには命がけで。簡単にもらったものなら、「ちょっとそのへんに置いておこうか」みたいなことになりかねません。

あと僕は、映画とか本とかの宣伝で「涙が止まりませんでした」みたいな惹句が多すぎるのも気になります。昔はそんなになかったと思うんだけど、最近はなにしろ多いですよね。泣きゃあいいってもんでもないだろ、みたいに思うことが多いです。人々はそんなに「感動」に飢えているのでしょうか? 泣くのと感動するのとは、ちょっと違うような気もしますが。

村上春樹拝