本にならない幻の作品ですか?

村上さんこにゃにゃちわ。『街と、その不確かな壁』という作品がありますが、もう書籍化されることはないのですか?  個人的にはすごく読んでみたいのですが。
(井上、男性、28歳、介護)

はい、こにゃにゃちわ。その小説はのちに『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』という小説に吸収合併されています。「三菱東京UFJ銀行」みたいな感じで。「街と、その不確かな壁」はいわばその長編小説の先触れというか、原型のようなものなのです。ですから本のかたちにはせずにうっちゃってあります。『1973年のピンボール』のあとに、この作品(中編小説)を書いて「文學界」という文芸誌に発表したのですが、どうしても気に入らず、のちに大幅に書き直し、新しい部分を付け加え、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』というかたちにしました。もしご興味があれば、どこかの図書館でその「文學界」を探して読んでみてください。大きな図書館であれば見つかると思います。この先もこの作品を本にする予定はありません(今のところ)。すみません。

村上春樹拝