プレスティッジに名盤が多いのはなぜ?

村上様こんにちは。私は40歳になってから、ジャズにのめり込んでしまったものです。いろいろ聴いた中で、私が手に取ることが多いレコードは「プレスティッジ」です。創始者のボブ・ワインストックはジャズメンに評判悪い人で有名ですが、彼のレーベルで名作が多いのは何故なのでしょうかね。人間追い詰められると実力以上の力が出るのでしょうか? 
(ボブ、男性、46歳、会社員)

大手のレコードレーベルが、自社イメージの低下を恐れて、黒人の若手ジャズ・ミュージシャンにほとんど手を出さなかったので、当時のプレスティッジとかブルーノートといったマイナーレーベルは、かなりの安ギャラで彼らをかき集め、とにかくがんがんレコーディングさせたわけです。みんなお金がほしいから(麻薬も買わなくてはならなかった)、なにしろハングリーに録音の数をこなした。そんな中から白熱の名演が結果的に生まれていったということなのでしょうね。映画「キャデラック・レコード」をごらんになると、だいたいのそのへんの感じはおわかりになるのではないかと思います。

60年代に入って大手レコード会社が「ジャズもなかなか金になるじゃないか」と気がついて、ミュージシャンを片端から引っこ抜いていったので、マイナーレーベルは徐々に没落していきます。そしてそれにつれて、ジャズも少しずつ本来の生命力を失っていきます。黒人ミュージシャンたちは自分たちが50年代に、ユダヤ系のレコード会社のオーナーたちにさんざん搾取されたという恨みを持ち続けていたようですね。本当は白人が実権を持つメジャーレーベルが、急進的黒人音楽を敬遠して閉め出していたニッチを埋めていただけのことなのですが。

ワインストックさんが亡くなったとき、彼が所有していたプレスティッジ・レコードの全コレクション(すべて未使用)がオークションに出ました。いったいいくらで売れたんだろう? 今は誰が持っているんだろう? 

村上春樹拝