正直な研究者ではダメですか?

村上さん

はじめまして。
私は薬学部の5年生です。細菌の免疫逃避機構に関する研究をしています。自分の力不足に悔しい思いをすることも多いですが、研究はすごく面白いです。

ただ、研究者として生きていくには、研究だけではなくて、ある種の政治力やコネクションも必要なようです。教授に気に入られることも大事なようですし、時には人の研究結果をさも自分が結果を出したように学会で発表し業績をあげる教員もいます。
こういうことは、研究者だけではなく、小説家など他の職業にも言えることのような気がします。
私はズルをしない、正直で実力を持った人間でありたいと思いますが、それだけではダメなのかもしれません。
村上さんの意見を聞かせてください。
(緑ちゃんに憧れる女の子、女性、22歳、大学生)

研究、いろいろと大変だと思います。僕は研究なんてしたことないので、どういうものだかよくわかりませんが。でもまあ、世間にはいろんな人がいます。もちろん小説家にもいろんな人がいます。はしっこい人がいたり、のんびりした人がいたり、戦闘的な人がいたり、要領の良い人がいたり、親切な人がいたり。で、思うんですが、人生というのは長距離レースみたいなものです。長い時間をかける勝負です。途中で誰かに抜かれたり、誰かを抜いたり、そういうのってあまり大勢にはほとんど関係ありません。自分のペースを守ってゴールを目指すことが何より大事になります。途中経過は気にしないで、自分のペースをつかんでください。そうすればそんなにひどいことにはなりません。優勝はできないかもしれないけど、後悔はしません。それが大事なんだよね。がんばって研究を続けてください。

村上春樹拝