タフでなければ読み続けられない?

私は20年ほど前から村上さんの作品を読んできました。でも最近は読むことを避けています。作品について私の感想と周囲で耳にする感想があまりに違うため、自分はおかしいのだろうかと怖くなってしまったのです。読書という個人的で単純な行為が、社会通念の影響を受けてしまうことは避けられないのでしょうか。読み続けるためにはフィリップ・マーロウやサム・スペードのような強靱な精神が必要なのでしょうか。村上さんからのアドバイスがあればお聞かせいただければと思います。
(ゆきむね、男性、35歳、福祉関係)

そうですか。それはお気の毒です。僕もあなたと同じような気持ちを抱きたくないので、僕の本に対する書評などはいっさい読まないようにしています。ひょっとして自分がおかしいのか、とか(僕だって)思ってしまいかねないから。あなたもできるだけそうされた方がいいと思いますよ。ほかの人の意見なんてあたまから無視すればいい。社会通念なんて、読書とは何の関係もありません。小説なんて、とにかく自分が読みたいように読めばいいんです。誰に遠慮することもありません。もし小説を読むことが自由なおこないではなくなったとしたら、この世の中でいったい何が自由なおこないなのですか? これからも僕の本を自由に楽しく読んでくれると嬉しいです。

村上春樹拝