ふと、抱きしめてほしくなる

村上さん、はじめまして。
村上さんの簡潔なお答えは、読んでいてぴりりとして、程よい刺激になります。

私には親と同年代の男性で、とてもお世話になっている方がいるのですが、私はたまにその方のことが異性として好きなのではないか、と混乱するときがあるのです。私はその方を先輩のような、父のような、友だちのような存在に思っていて、とても自分の女の部分を出そうとは思えません。そういう対象ではないと思っています(その方には家庭もありますし)。しかし、ふとした瞬間に「抱きしめてほしいなあ」とか思っているんです。そんな自分が嫌になります。早く本気で愛せる人と出会って、その人へこの気持ちを向けたいのですが……。私はこの方とはあまり会わないでいたほうがよいのでしょうか? 
(きび砂糖、女性、28歳、事務員)

そうですか。むずかしい問題なので、僕にはうまい忠告のようなことができません。いつも言うことですが、人を好きになるというのはとても素晴らしいことです。でも現実が重いものだというのも、またひとつの真実です。あまりいろんなことを急いで決めないで、自分の心の動きをよく観察なさるといいと思います。心の動きというのは面白いものです。ちょっとしたことでバランスが移動します。うまくいくといいですね。

村上春樹拝