面白い新聞って何でしょう?

こんにちは。私は新聞記者をしています。ご存知の通り、人びとの新聞離れによって業界は縮小傾向にあります。私は主に政治の取材をしていますが、苦労して取材して、一生懸命に記事を書いても、なかなか皆さんに新聞を読んでもらえない世の中になってきました。面白い新聞をつくりたい、と思いますが、社内の議論はあまり生産的だとは思えません。そこで村上さんにお聞きしたいのは「面白い新聞って何でしょう?」ということなのです。別に洗練されたビジネスモデルがどうだとかいう議論ではなく、純粋に、村上さんならどんな新聞を読んでみたいと思いますか? これまでに読んだ記事で「面白いなあ」と感じられたのはどんな記事ですか? ご意見を聞きたいです。
(にっけい、男性、28歳、新聞記者)

僕は海外での生活が長くて、ずっと日本では新聞をとっていなかったんですが、1995年に『アンダーグラウンド』という地下鉄サリン事件を扱った本を書こうと思い、オウム真理教裁判をフォローするために、新聞をとり始めました。そのときに主要紙を並べて細かく読み比べてみたんですが、毎日新聞の「裁判傍聴記」が僕としてはいちばん読みやすく、記述も的確だったので、毎日新聞をとることにしました。新聞によって少しずつ観点や文体が違ってくるんですね。新聞それぞれ独自の「持ち味」「人柄」みたいなものは、テレビのニュースや、インターネットのニュースではなかなか出てきません。そういうきちんとした「売り」みたいなものが見えてこないと、新聞の未来はあまり明るくないのではないかと思います。速報性や万遍のなさよりは、パッケージとしてのメッセージの信頼性が大事になってきます。

あと新聞の文体ってもう少しどうにかなりませんかね。決まりきった表現が多すぎて、いくぶん権威主義的な匂いもまだ残っており、なんか今ひとつ馴染めません。これだけメディアの様相が激しく変化しているのだから、新しい新聞文体みたいなものができていってもいいんじゃないのかな。これまでにない文体を作っていくというのは、実際にはなかなかむずかしいでしょうが、やはりそういう努力も必要ですよね。

村上春樹拝