それでも読まずにはいられません

私は現在42歳です。17歳のときに『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んで以来、ずっと村上さんの本の大ファンです。
長編も短編もノンフィクションも、それ以来コツコツと読み続けています。

村上さんの本はとにかく読み出すと止まらなくなるし、なんだか気になる文章も出てきます。何度も読み直した作品も多くあります。とにかく読まないわけにはいかないという感覚です。

ただ正直なところ長編も短編も全く意味がわかりません。意味どころかワケが分からずいつもびっくりします。まるでびっくりさせるために書かれたもののように感じてしまうほどです。
当然ながら私は村上小説の大切な部分を自分が理解できてるとは全く思っていません。村上さんがおそらくは物語を通じて何か、とても繊細で大切な何かを見せてくれているのではないかと推察するのですが、残念なことに私にはどうしてもそれが見えないし、聞こえる気配すらありません。いつも小説に置き去りにされてしまいます。

もっと若い頃は、いつか年齢を重ねればもう少し手応えのある読後感が自分の中から湧き上がってくるものだろうと安易に予想していました。ところが42歳になっても私の村上本への感想は17歳の頃と全く変わっていません。
このままでは私は60歳になり、80歳になっても同じことを感じていそうです。

村上さん、こんな報われない文学センスのない、それでも熱心な読者(きっと他にも少数ながらいるのではないかと思うのです)のためにどうか励ましの言葉をください。きっとどれほど置き去りにされても、これからも私は村上さんの本を読み続けると思います。

まだまだたくさんの本を創り出してくれることを楽しみに待っています。
(雪わさび、女性、42歳、主婦)

いつも僕の本を読んでくださってありがとうございます。僕の書く小説の意味がわからない、ということですね。そうですね、変なものがいっぱい出てくるし、変なことがいっぱい起こります。その意味をいちいち考え始めると、わけがわからなくなるかもしれません。でも作者である僕にだって、僕の本の中で、わけのわからないことはたくさんあります。でも「わけはわからないけれど、これは正しいことなんだ」という確信があるから、そのように書いています。迷いなく書いています。たぶんそこで大事なのは、「わけがわからない」ものを、わけがわからないなりに、しっかり受け止められる力です。僕らがこの人生を――このときとして苛烈で残酷で悲しみに満ちた世界を――生きて行くには、そういう力が必要になります。もしあなたが「よくわけがわからんけど、読んでいて面白い」とお感じになるのなら、あなたはその「わけがわからない」ものをしっかり受け止めておられるのです。だから大丈夫です。気にしないで、どんどん読んでください。

村上春樹拝