遠い国のニュースではなくて

最近普通に暮らしていても、並行して、もし私たちが収容所のようなところへ連れていかれたら、とか、爆撃をうけたら、とか考えてしまいます。テレビでは各地の紛争を遠くから眺めることができるけど、現実味はありません。しかし、政治が変わると、どうなるかはわかりません。今色々と勇ましい話がある人もいるようですが、多様性と寛容さを持って今日もあしたも明後日も、静かに暮らせることを願うばかりです。
(匿名希望、女性、39歳)

僕は以前イスラエルに行ったとき、検問所でアラブ人の一家が乗った乗用車からお父さんが引きずり出されて、若いイスラエル軍の兵士たちに袋だたきにあっている光景を目にしました。奥さんや小さな娘さんたちの前で無抵抗のまま、殴りつけられていた。どういう事情なのかはわかりませんでしたが、そういう荒々しい光景を目にしていると、僕らがこうして当たり前のものとして暮らしている平和な世界は、実はまぼろしみたいなものなんじゃないかと、つい考えてしまいます。ちょっと間違えば、そういう荒々しさが僕らの足元からも吹き出してくるんじゃないかと。

村上春樹拝