何か心境の変化があったのですか?

村上さん、はじめまして。
本とビールが好きな主婦です。『女のいない男たち』とても面白かったです。
とても自然に物語に引き込まれました。
ある日、私が聞いているラジオ講座の講師の方がこの本にふれ、
“村上春樹のこの心境の変化はどうしたのか、何があったのか”
と言う感想を聞いた時、私はまるで自分に向けられた質問のように感じてしまいました(自分本位まるだしですね)。
私の答えは、退職して自分と向き合う時間が増えた生活の中で読んだので、違和感なく読み進むことができました。
あの~、村上さんの中ではあの本を書くにあたり何か心境の変化があったのでしょうか? 
教えていただけたら嬉しいです。

では、益々のご活躍をお祈りいたします。
(本と麦酒、女性、63歳、主婦)

心境の変化というほどのものはないんですが、いつもと違うものを書いてみたいという気持ちのようなものはけっこうありました。短編小説って、短い区切りの中でやりたいことをやりたいようにできるというメリットがあります。冒険もできるし、普段は使っていない筋肉を使うこともできるし。それからもちろん僕がそれなりの年齢を重ねたということもあります。年齢をかさねないと書けない種類のものって、やはりあります。「これは五年前だったら、たぶん書けなかったよな」みたいな感じです。そうやって前に進んでいける。年をとることにもメリットがあるとわかるのは良いことですよね。

村上春樹拝