キスやハグは好きなのに

村上さん、こんにちは。
村上さんの小説の中では登場人物が比較的気持ちよく(快感という意味ではなく)セックスをしているように思うのですが、どうすればそういうふうになれますか? 
相手のことを愛していても、セックスが好きになれません。強く求められればしますが、相手の気持ちに心からこたえているわけではないという点で申し訳なく感じるし、欠陥があるように感じています。キスやハグは好きなのに。夢中になれないというか醒めた自分がいるんです。
(18時57分、女性、38歳)

性に関してはかなり個人差があります。どうしてそんな個人差が生じるのか、僕にはわかりません。生まれつきのものなのか、心理的なものなのか、環境的なものなのか。いずれにせよ、あなたは性に対してかなり淡泊な方なのでしょうね。でもそれは欠陥というようなものではありませんし、そのぶん「性欲」という重いくびきから解き放たれるわけで、精神的には楽なことかもしれません。そう思って自分のペースでやっていかれるしかないのではないでしょうか。ただある日何かの拍子に性に開眼して、それ以来もう……ということはあるかもしれませんよ。人生なにが起こるか、先のことはわかりませんから。

村上春樹拝