漫画やアニメを見ないのですか?

村上さんは漫画もアニメも読まないし観ないとどこかで読みました。
表現には、小説と随筆と戯曲と詩と漫画と絵画とアニメと映画とテレビとラジオと舞台と落語と漫才とコントと歌舞伎とゲームと音楽と……その他諸々のものがあります。
表現方法が違うだけで、その他の表現にも感動や魂の共鳴があると思います。
そこに人生を揺るがすような思いや魂があるかもしれないのに、漫画やアニメを観ないと仰っているのはなぜですか? ……私も、そこに感動があるかもしれないのに、浪曲や人形浄瑠璃を観には行かないのですが……。たまたま興味関心が向かなかったり、その機会がないというだけでしょうか。

漫画やアニメも表現として成熟して、見る価値のあるものになっていると思います。
(よしはる、男性、33歳、公務員)

残念ながら、人生の持ち時間にはそれぞれ限りがあります。一人の人間が何もかもをカバーするのは現実的に不可能です。だからある程度の年齢になると、興味の対象を絞って活動していかなくてはなりません。僕も若い頃はわりに熱心に漫画を見たり、アニメを見たりしていました。でも今はそこまで手を伸ばしている余裕がありません。決して漫画やアニメを軽く見ているわけではありません。「表現として成熟していない」とか思っているわけでも、もちろんありません。

僕は文楽はときどき観に行きます。見出すと面白いですよ。でもなぜか歌舞伎は行かない。野球は見ますが、バスケとラグビーは見ません。どうしてか? ただ何もかもと関わっているだけの時間的余裕がないからです。年齢を重ねるにつれて、時間はどんどん過ぎ去る速度を上げていきます。あなたもある程度の歳になると、そのへんの感じはおわかりになるのではないでしょうか。

村上春樹拝