「沈黙」は例外的な短編小説

こんにちは、春樹さん。少し長くなりますがお許しください。私は昨年、短編の「沈黙」を読んで衝撃を受けました。それは社会人である私が大沢さんと同じ立場にあったからです。私はこの作品を読む一ヶ月前に、会社で孤立状態にあり、体調を崩して辞めました。会社に青木くんみたいな先輩がいて、上司も私を相手にしてくれなくなり、辛い日々が続きました(何も悪いことはしていません。真面目にせっせと仕事をしていました)。とても悔しいけど辞めるわけにはいかないので「今月まで耐えよう」「あと一週間頑張ろう」とまさに大沢さんと同じように自分に言い聞かせて出勤しましたが、結局耐えられず退職しました。

私は春樹さんの全ての長編やエッセイを繰り返し読んでから短編小説に入ったので、もしあの辛い時期に「沈黙」を読んでいたら、もう少し頑張れたのではないかと思いました。しかし、この作品に出会えたことがとても嬉しく心に残っています。
私も「そういう連中」にはなりたくありません。私がずっと抱えていた事を、文章として細かに表現してくださり、何度も何度も頷きながら読んでいました。春樹さんも大沢さんのような辛い体験をされたことはあるのでしょうか。
この「沈黙」は現代の社会においても非常に大きな意味を持つのではないかと思います。
春樹さんの小説にはいつも救われており、読んできてよかったなぁと心から感謝しています。(「国境の南、太陽の西」の島本さんが好きです)これからもついていきますので、どうぞよろしくお願いします。本当にいつも素晴らしい作品ありがとうございます。
(二槽式洗濯機、女性、34歳、人間関係のストレスにより、辞めて失業中)

僕もちょっと似たような経験があり、そのときの気持ちをもとにしてあの短編小説を書きました。僕のこれまで書いた短編小説の中では、例外的に(というか)ストレートにリアリズムな話です。ああいう風に書くしかなかったので。少しでもあなたの気持ちの支えになったのだとしたら、僕としてはとても嬉しいです。でも同じような気持ちを味わっている人は、全国にきっとたくさんいるんだろうなと思います。

村上春樹拝