翻訳で作品を本当に理解できている?

はじめまして。私は外国文学が好きで、特に、村上さんを通じて知ったレイモンド・カーヴァーやチャンドラーが大好きです。この他、フランスやロシアの文学も好きです。ただ、いずれも翻訳を通してで、原文で読むことはありません。そこで質問ですが、はたして、原文で読まずに、その作家の作品の何割ほどを理解したことになるのでしょうか。ただ単に、ストーリーを理解しているに過ぎないのではないでしょうか。もちろん、翻訳者の方々の、原文の文体を日本語に置き換えるご苦労は並大抵ではないとは思いますが……。このことは逆に、川端康成や谷崎潤一郎などの日本文学を翻訳で読む外国人にも当てはまると思います。作家であり翻訳家でもある村上さんのお考えをお聞かせください。
(吉永**、男性、54歳、公務員)

大丈夫です。(自分で言うのもなんですが)日本の翻訳技術はなかなか高いですよ。僕も原文のテイストが損なわれないように、精一杯努力をしています。もちろん細かいことを言い出すときりはありませんが、テキストが優れたものであるなら、それを読むことの感動性や喜びはほぼそのまま伝わってくるはずです。ただ、韻文の翻訳はすごくむずかしいですね。詩なんかに関しては、ときどきお手上げ状態になります。万葉集の英訳なんかもずいぶん大変だろうな。

村上春樹拝