パガニーニにコロリと騙されたい

ハルキさん、パガニーニはお好きですか? 
私はネコの濡れ鼻とパガニーニのヴァイオリン協奏曲と自分の人生が大好きです。ちょっと手直ししてもう一回同じ人生を歩んでも良いかな、と思うくらい楽しくて幸せな人生です。
パガニーニのヴァイオリン協奏曲の第二楽章は、シューベルトが天使の歌声を聴いたと絶賛したそうですが、正にこの世のものとは思えないあの素晴らしい曲を作った人はどんな所で育ったのだろうか? と思い、ジェノヴァに4回行ってみました。最後にはジェノヴァ大学の教授が「今時イタリア人だってパガニーニの事なんて忘れちゃってるのに、何で日本人のキミが?」と呆れながらもゆかりの地をフォカッチャを一緒に買い食いしながら案内してくれました。パガニーニと言えば「超絶技巧で女たらし」としか言われず大変腹が立ちますが、昨年上映された映画はとても好意的な上に予想に反して刺青ブロンドギャレット君が適役で、何と第二楽章がアリアに編曲されていて正に目からウロコが……とんでもなくステキでした。
ご覧になりましたか? 

ああ、あの時代に生まれてパガニーニの追っかけになってコロリと騙される人生も捨てがたいな、と悩みます。

でもね、その教授のお話によると、彼は晩年に何十歳も若い女性と再婚したそうなのですが、教会でのサインを調べたら、何と彼は自分の歳を4歳若くサバ読んで書いていたんだそうです。カワイイですね! 
(scott walker、女性、63歳、歯科医師)

偶然ですね。ちょうど先週パガニーニのヴァイオリン協奏曲一番と二番の入っているレコードを買ってきたばかりです。で、この演奏がなかなか良いんです。violinはRuggiero Ricciで、アンソニー・コリンズ指揮のロンドン交響楽団(London LL1215)。値段は3ドルでした。僕はパガニーニのヴァイオリン協奏曲ってあまり真面目に聴いたことなかったんだけど、「けっこういいじゃん」と思いました。そこにあなたのメールが入ってきた。素晴らしいタイミングです。パガニーニ、追求してみてください。そんな人、たしかにあまりいないと思いますから。

村上春樹拝