悔しいと感じない性分なのです

村上さん、こんばんは。村上さんの「悔しい」経験談を教えていただけますか? 私は「悔しい」と感じることがほとんどありません。「残念だな、悲しいな」と感じることはあるのですが。村上さんの作品にも「悔しい」気持ちが出て来ないように思えるので、聞きたくなりました。
(のぶ、女性、45歳、英語非常勤講師)

そういえば「悔しい」と思ったことってあまりないですね。東海林さだおさんの「ショージ君」には「ぐやじいいい!」という表現がよく出てきますが、そういうことってまずないな。子供の頃よく母親に「あなたがもうちょっと負けず嫌いだったら、成績も上がるはずなのに」と言われました。でも昔からそういうことであまりがんばれないんです。成績とかで負けても悔しいと思えないから。

文芸の世界にも言葉のグラディエーターみたいな方がおられまして、相手を言い負かすことに生きがいを感じているみたいです。僕もときどき挑発されますが、何を言われても相手にしないと決めています。相手にしなければ、だいたいそのうちにあきらめてどこかに行ってしまいます。「悔しい」と思って反論すれば、相手の思うつぼです。そういう「相手にしない」という態度が習慣になってしまったところもあるかもしれません。でもまあ、ほとんど生まれつきの性格ですね。

村上春樹拝