新宿駅の9、10番線のホームにて

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』のラストシーンでつくるが周りの電車や人々を眺める新宿駅の9、10番線のホームが私も好きです。地元に帰る時にこのホームから特急あずさに乗りますが、人がいっぱいの太い通路からエスカレーターに乗ってホームへ上がると、まだ新宿駅にいるのにもう半分地元に辿り着いたような安心感があって、いつもそのタイミングでなんだか脱力します。このホームだけ人や時間の流れが違って、確かに新宿駅を観察するにはとても良い場所だと思いますが、村上さんもこの場所に何か特別な思い出や思い入れがあるのでしょうか? あと、ぜひつくるにはいつかあずさに乗って私の地元まで来て欲しいです。
(poppies、女性、27歳)

僕はこの最後のシーンを外国で書いたので、「新宿駅、どんなだっけなあ……」と一生懸命思い出しながら、ほとんど想像で書きました。こういう情景描写って、想像力をめいっぱい駆使して書いて、書いたあとで実際のものを見に行くというのがいちばん良いみたいです。見てから書いちゃうと、どうしても説明的になっちゃうので。フィンランドの部分もそうやって書きました(あとで見に行った)。名古屋は行かなかったです。だいたいあっているはずだから。

僕は「あずさ」には、サイトウ・キネン・フェスティバルを聴きに行くために松本に行くときに乗ります。今年も行くと思います。小澤さん、元気になってほんとによかったです。

村上春樹拝