昨日、妻から別居を提案されました

はじめまして。村上さんにメールが送れてちょっとワクワクしています。
村上さんのいくつかの小説では主人公が女性と別れますよね。
僕は初めて村上さんの小説を読んだ20歳のとき、主人公達はなんでこんなにも淡々と女性との別れを受け入れられるのだろうと思っていました。自分だったらもっと悲しんで泣いてしまうだろうに、と。

今、僕は27歳です。初めて小説を読んだときからの7年間で、僕は大学を卒業し、仕事に就き、結婚し、そして昨日妻から「もう好きではないから」と別居を提案され、承諾しました。その時、自分でも幾分驚きましたが、僕は20歳の時のように悲しい気分にはならず、ただ淡々と事実を受け入れました。ちょっとは悲しかったけど、仕方が無いと言う気持ちが大きかったです。

上手く言えないけど、大人になるってきっとこういうことなんですね。
村上さん、年を取ると悲しい気持ちになることって少なくなっていくものですか? 若いときのように感動したりすることも減ってしまうものですか? 
そうだとしたらなんだか寂しいですね。
(kei、男性、27歳、医師)

そうですか。奥さんから急に別居を提案されたんだ。それはたいへんでしたね。お気の毒です……と言っていいのかどうか。

悲しみを感じないということですが、これから少し時間がたてば、気持ちの質も徐々に変化していくと思いますよ。今は悲しくなくても、それほどつらくなくても、腹が立たなくても、そのうちにいろんな感情がどっと吹き出してくるかもしれません。27歳というのは、まだそんなに達観できる年齢ではないからです。苦しいこともあるかもしれませんが、がんばっていろんな感情をくぐり抜けてください。それが自然なことです。健闘を祈ります。

村上春樹拝