もう変なこと始めないでくださいね

春樹さんのデビュー作を、「群像」で直接読んだのが自慢です。40年近く前のことですね。
吉行淳之介氏がとても誉めてたのを良く覚えています。以来、ともに年を経てきた気がします。ビール好きなのも、マラソンはじめたのも貴方のせいです。もう変なことを始めないで下さいね。

ところで、村上さんにとって年を取ることはどういう意味がありますか? それから一番好きな作品は何ですか? 私は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が一番好きです。初期の登場人物が記号だった頃の作品がとても好きです。
(垂れ流し、男性、57歳、煉瓦づくり)

僕の『風の歌を聴け』が「群像」の新人賞を受けたときの審査委員は吉行さん、丸谷才一さん、島尾敏雄さん、佐多稲子さん、佐々木基一さんという、とてもゴージャスな面々で、全員一致で僕を推してくださったということです。この五人が全員一致で推すってことはまずないんだけどね、と言われました。もう皆さん亡くなってしまいましたが、懐かしいです。授賞式にはVAN JACKETのオリーブ・グリーンのコットンスーツを着て、リーガルのスニーカーを履いていきました。それしか着ていくものがなかったので。革靴もなかったし。でもまだもろIVYスタイルだったんだ、当時は。

僕がいちばん好きな自作というのはありません。いったん書き終えちゃうと、それほど興味が持てなくなってしまうんです。次のことしか考えられません。愛想がなくてすみません。

村上春樹拝