一度痛い目にあうしかありませんね

前略
村上さん、こんにちは。
少し大げさかもしれませんが、私は村上さんと同じ時代に生き、村上さんの最新小説が出版されるたびに、すぐにそれを手に取って読むことができることの幸せを、いつも感じています。また、いつか新しい小説が読めることを楽しみにしています。

さて、肝心の質問ですが、私は40代半ばとなり、近頃、自分でも信じられないくらい短気になってしまい、気持ちが抑えきれないことがままあります。時には怒鳴ってしまうこともあるのですが、そのことを後になって後悔するのです。

そこで、人生の先輩として、自分の気持ちを上手にコントロールする方法やコツがあったら、こっそり教えていただけないでしょうか。
匆々不一
( kannonyato、男性、46歳、地方公務員)

あなたのこのメールがちょうど4500通目のメールになりました。おめでとうございます。記念にコードネームを差し上げます。あなたのコードネームは「トマトどんぶり」です。気に入らないからといって怒鳴らないでくださいね。しかたないんです、こればかりは。この名前を背負って、残りの人生を生きてください。

短気というのはなかなか治りません。自分では「抑えなくっちゃな」と思っていても、なかなかその場になると抑えがききません。一度痛い目にあうしかありませんね。痛い目にあうと、懲りて注意するようになります。僕も若い頃はこれでけっこう喧嘩っぱやかったんですが、少しばかり懲りることがあって、それ以来喧嘩はしなくなりました。何を言われてもあまり怒らなくなりました。その方が人生はらくです。がんばって我慢してください。

村上春樹拝