失恋男に「第三の道」はあるか

村上さんこんにちは。恋人と別れて1年が経ちましたが、未だに相手のことが忘れられません。楽しかった記憶だけが思い出され、相手が100%の恋人だったような気にすらなってきています。こういう相談をすると「新しい恋をしろ」とか「立ち直るまでとにかく待て」とか言われてばかりなのですが、第三の道はないでしょうか。
( 頭陀袋、男性、31歳、事務職)

「みんなは時が解決してくれるというが、彼女が去ってから、僕の時間はとまったままなんだ……」とレイ・チャールズがせつせつと歌いあげております。アイ・キャント・ストップ・ラアアアアヴィン・ユー……と僕がここで歌ってもしょうがないですね。

あなたの気持ちは僕にも及ばずながらわかります。僕だってかつてそれに似た気持ちを経験したことはありますから。いいじゃないですか。ずっと彼女のことを考えていれば。失恋のあとも「楽しかった記憶だけが思い出され」なんて、そんなのなかなかないことです。恨みつらみもないんでしょう? それって素晴らしいことです。「ぼくは思い出の中に、昨日の夢の中に、生きていくんだ」とレイ・チャールズは結んでいます。とても悲しい歌です。毎日レイ・チャールズを聴いて、涙をぬぐって過ごしましょう。そのうちにたぶん、良いこともあります。「今日の涙が、明日の虹になるのさ」とリック・ネルソンも歌っております。リック・ネルソン、知らないか。

村上春樹拝