『アフターダーク』で伝えたい事とは?

村上様
初めまして……
2日程前に『アフターダーク』を数年振りに読み返したところです。しかし残念ながら、私は、村上様の『アフターダーク』を通して読者に伝えたい事を見つける事が出来ずにいます。
村上様にヒントを頂きたくてメッセージさせて頂きました。

高橋とマリは、マリが中国に留学した後に、文通が開始され親しくなり、マリの帰国後に二人は交際を始める事になるのでしょうか? 

ヒントを頂ければ、絡まった糸が解ける様な……そんな気がします。
村上様に一度だけでもお会いしたいです。是非、都内書店でサイン会をお願い致します。
期待しております。ありがとうございました。
(★M、女性、不詳、夢に向かって勉強中)

僕は小説を書いているだけで、とくに「読者に伝えたいこと」があるわけではありません。小説は新聞の社説ではありませんので、「これを伝えたい」という具体的なメッセージがそこにあるとは限りません。そのかわり、新聞の社説を読むよりはずっと(たぶん)面白いです。まず「面白いな」と思っていただければ、こちらの意図のおおかたは伝わったようなものです。頭よりは心で、心よりは魂で読んでもらうことが、小説家にとっての大きな喜びになります。もちろんそれにこたえるだけの作品を書かなくてはならないわけですが。

というわけで、作品についてのヒントはありません。最後のページが終わったあと、話がどのように進んでいくのかは、あなたがご自分で決めることです。

著者のサインなんて所詮は紙の汚れのようなものだと僕は思うんですが、そうでもないのかな。

村上春樹拝