とある施設の偶然と必然

こんばんは。村上さん、偶然は必然という言葉をどう思いますか? 
わたしは1984年生まれ。高松で生まれ、とある施設で育ち、大人になり神戸へ来ました。そのとある施設というのが、『1Q84』の内容と酷似しており、取材でもしたのだろうかと思うくらい似ていました。

今まで住んだ場所もそれぞれ作品に出てきたりと、何かと偶然が多く、勝手にこれは必然なのではと思っています。村上さんの作品と出会ったことが、です。いつかこれを伝えることが出来たら、とずっとずっと思っていました。
私は偶然は必然という言葉を大切にしています。村上さんはどう思いますか? 
(くりーむぱん、女性、30歳、美容師)

僕が想像ででっちあげて小説に書いたものが、現実にあるものと酷似していて、「取材したのだろう」とか「モデルにしたのだろう」と言われることはけっこうよくあります。想像で書きました、と言ってもなかなか信じてもらえません。

僕はいったん頭の中で何かを想像すると、それをどんどん細密に作り上げていきます。細部をひとつひとつ具体的に固めていくわけです。するとそれがどこかで現実に結びついてしまうのかもしれません。僕はそういう手仕事が好きだし、わりに得意なのです。『ノルウェイの森』に出てくる精神医療施設もまったくの想像の産物ですが、それとそっくりのところがあると聞きました。いろんな方面にご迷惑をおかけしていないといいのですが。

村上春樹拝