この街は歪んでいるのでしょうか?

私は北海道の小さな港街出身です。私はこの街が大嫌いで、お金になることは何でもして19歳で上京しました。冬には流氷がきて、ギューギューという地の底から響くような、氷が擦れる音で目覚めます。空は毎日灰色で、ほたて加工場から生臭い匂いがします。人口に見合わない巨大パチンコ店が3つもあり、駐車場は常に埋まってます。港付近にはトラブルがあったのか、ロシア人立ち入り禁止のスナックが立ち並びます。
私がこの街を嫌いな理由は、この街ではとにかく病んだ人が多いのです。例えば同じクラスの子のうち、1人は真冬の海に車ごと突っ込み、1人は家に火をつけました。2人は自殺し、1人は精神病院に入ったままです。失踪や新興宗教もとても多いです。
私自身はこの街にいると歪むと思い、早いうちに脱出しましたが、東京の人にその話をするとたいてい笑われます。現代にそんな闇のある土地があるか、思いすごしだ、と。
では何故私はこんなに生まれ故郷に気味悪さを感じ、逃げたくなるのでしょうか。自殺者や頭がおかしくなった人が多いのは何故でしょうか。
村上さん、土地が人を歪ませることはあると思いますか。だとしたら何が原因なのでしょうか。
(たまこ、女性、34歳、ペットシッター)

そうですか。そういう場所が実際にあるんですね。なんだかスティーブン・キングの小説の舞台になりそうです。決心してそこを出ることができてよかったですね。そういう場所があるかもしれないということは、僕にも想像できます。決して笑ったりしません。むしろ肌寒くなります。

僕も故郷に久しぶりに帰ると、いろんな亡霊に巡り会います。そこには僕自身の亡霊も含まれています。良いところなんですが、もうここに戻ることはできないなと思います。

村上春樹拝