街の面影が消えた

村上さん、はじめまして。
私は首都近郊の地方都市に住んでいます。海辺の別荘地で、子供の頃は古い別荘や企業の保養所がたくさんありました。しかし、バブル経済崩壊後、その多くが手放され、マンションや住宅地に変わりました。自然も多く破壊されました。

それは時代の流れだから仕方ないと思うのですが、その後に建てられた建物を見るとがっかりせずにはいられません。なんとなくヨーロッパを真似たような建物ばかりで、昔の日本的街並みの面影の欠片もありません。新しいそれらの街並みの中を歩いていると、今自分が何処にいるのかわからなくなってきて哀しくなってきます。

日本人は美的感覚に優れている面が多くあると思うのですが、どういうわけか街の景観には無頓着だと思います。
もう少し、規制を含めてみんなで考えて行くべきかと思いますが、村上さんはどう思いますか? 
そういう面に気をつけて工業から観光業にシフトしたら、もっと精神的に豊かな国になるのではないかと個人的には思うのですが……。
堅い話題でごめんなさい……。

今後も小説楽しみにしてます! 健康に気をつけて頑張ってください! 
(ワタナベケンイチ、男性、38歳、自営業)

僕の知っているイタリア人は、日本って繊細でインテリジェントで素晴らしい国なのに、どうしてこんなに町並みが醜いのだろうと嘆いていました。たしかに彼の言うとおりかもしれない。このあいだイタリアの田舎をまわってきたんですが、町に統一感みたいなものがあって、ほんとにきれいだったものね。

しかし現実的にどう対処すればいいかというと、これはなかなかむずかしい問題です。僕もだいたいあなたと同じような環境の中に住んでいます。

村上春樹拝