増毛か、ボウモアか

村上さん、はじめまして。
私は今年50歳を迎えるのですが、だいぶ髪がうすくなってまいりました。
おでこの生え際が後退していくタイプだとまだ良かったのですが、残念ながら頭頂部がハゲてきております。

「いや~まいったな」と少々凹んでいる折にたまたま出会った本が『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』です。興味を持ってはじめてボウモア12年を飲んだのですが、村上さんが書いてらっしゃるとおり、1口目は、「なんだ? ヨードチンキみたいな臭いは」で、しかし2口、3口と飲んでるうちハマってしまいました。それまで親しんでいたブレンデッドウィスキーに比べてナチュラルでシンプルで限りなく奥深い……もうすっかりボウモアの虜です。

神様から「髪の毛をフサフサに戻してやる。そのかわりもうボウモアは飲めなくなるが」と提案されてもちょっと迷ってお断りすると思います。
ボウモアの香りはハゲつつある中年男の心の隙間を優しく埋めてくれるようです。村上さん、ボウモアを教えて下さりありがとうございました。

ところで私は日が暮れて独りボウモアをちびちびやっている時には、ナルシソ・イエペスの演奏するバッハのリュート組曲やプレスティッジ時代のジョン・コルトレーンなんかをよく聴いたりするのですが、村上さんおすすめのウィスキーにあう音楽って何かございますか? 

よろしくおねがいします。
(こりとれん、男性、49歳)

JOHN LEWIS PIANO (Atlantic)を試してみてください。夕暮れのボウモアに似合うと思うんだけど。それにこれを聴いていれば髪もだんだん生えてくるみたいですよ。というのは真っ赤な嘘です。音楽には残念ながらそういう効用はないみたいです。健闘を祈ります。

村上春樹拝