邪魔しないで欲しいだけなのに

本日、2つ目の送信です。すいません。でも、この2つは誰かに言いたかったので、すっきりしました。失礼いたします。以下、本編。

私が付き合ってきた女性たちは、全員村上作品が好きじゃありません。どうしてでしょう? 私は村上さんの作品を『風の歌を聴け』から全て初版本(初期は文芸雑誌)で読んできました。私は、村上作品について、誰かと話したりすることを好みませんし、自分が村上作品を好きだと大きな声で言ったこともありません。もちろん、付き合ってきた女性たちに強要したこともありません。ただ一つだけ彼女たちにお願いしたのは、「村上さんの作品を読んでいるときは邪魔しないで欲しい!」ということだけです。しかし、彼女たちは声を揃えて、「私、村上ワールド全く分からない! 何だか難しくて……!」と言うではありませんか! 何度も言いますが、私は彼女たちに、「村上作品を読んでみてはいかがですか?」など一言も言ったことありません。付き合うときに、「村上ファンであること」なども述べていません。多分、「村上作品が好きだ!」とも聞かれない限り言っていないと思います。にも関わらず、高校時代から全てのガールフレンド、しまいには、過去2人の妻、そして、今の奥さんも村上作品が肌に合わないようです。こんな事を村上さんに言うのは大変失礼だと思うのですが、ある意味、村上さん以外にお話しするのもお門違いかと思い、この機会に告白してみました。
(裕比古、男性、52歳、会社役員)

そうですか。たいへんですね。いろいろとお気の毒です。

僕は自分がこれまで書いてきたのは、きわめて個人的な性質の物語だと考えていますし、それが僕以外の人の共感を得るということ自体がほとんど奇跡に近いことだと思っています。だから僕の書くものが好きじゃない、わからない、という人が世間にたくさんいるのは、まあ当然と言えば当然のことです。基本的にはそのように考えています。

というわけで、お気の毒ですが、ただ自分とまっすぐ向き合うしかありません。僕の個人的な物語があなたの心を惹きつける(たぶんある程度惹きつけているのだととりあえず仮定します)理由みたいなものを考えてみてください。それは読者一人ひとりそれぞれに違うものだと思うんです。じっくり考えてみる意味はあると思いますよ。

しかしこれまでずいぶんたくさんの女性とつきあってこられたんですね。これからもがんばってください。

村上春樹拝