創作と孤独について

村上さん初めまして! 
またこの企画が再開されて嬉しいです。採用されなくても目を通していただけるとのことで、それだけでも嬉しいです。僕は最近、カフカやサリンジャー、フローベール等の伝記を読んでいるんですが、何故彼らに興味を抱くかというと、文学に対する情熱が凄まじいのと、その情熱ゆえに人間としてある種の歪みがあるからです。自分の仕事に本当の意味で身を捧げることってかなり難しいと思います。彼らのような生き方は、それなりの孤独と犠牲を払いますよね。僕も創作をするんですが、なかなか孤独のなかに入っていけません。でも、そこを突き抜けないときっといい作品は創れないのでしょうね……。村上さんは創作するうえでの孤独について、どう思われますか? 
また、彼らのような仕事に対する在り方にはどう思われますか? 
(アクリル、男性、30歳)

カフカとかサリンジャーとかフローベールとかは、そうとうエッジのきいた人生を送られた方々です。僕の人生はそこまで特殊ではありません。わりに普通に暮らしています。早寝早起きで、運動もして、食事にも気を遣っています。でもいったい裏でなにをしているか、わかんないですよね。なにもしてなかったりして……。

文学に対する情熱が実際の人生を歪めることは多くありますが、みんながみんなそうではないだろう、というのが僕の基本的な意見です。そういう歪みが表に出る人と、出ない人がいます。本当は小説を書き続けることによって、内なる歪みが治されていくというのが理想なんじゃないのかな。

村上春樹拝