村の鍛冶屋のように

村上さんはじめまして。このテキストが村上さんに読んでもらえるのかと思うと、嬉しさと緊張で何回転もしてしまいそうです。

村上さんにおりいって相談したいことがあります。「物語を『書き切る』にはどうしたらいいか」という相談です。僕はもういい歳なのに、未だに作家になりたいという夢を捨て切れません。今はその、創作意欲的なものを、ブログやSNSなどで発散させています。書く内容は、体験談や考えていることの他に、短編小説も出すことがあります。

まあまあ人気もあるし、ネットというのは即座に反応が返ってもきますので、そこで中途半端に承認欲求を満たしてしまっているところがあります。でも本当は、長文を、賞に応募するなりネットで発表するなり自分で電子書籍化するなり編集部に持ち込むなりして、コンスタントに長編の「物語」を編む作家になりたいのです。

しかし、どうも最初のシーンを書くだけで飽きてしまって、物語を書き切ることができません。文字数的には、5,000字くらいで筆が止まってしまいます。そして翌日読み返すと、すっかり気持は冷めていて、その後は二度と開かれることがありません。

こんなことでは作家になれないまま、一生を終えかねません! たいへんです! 質はともかくとして、少なくとも最低ラインとして、まずは中長編を「書き切る」ことができなくては。もし長文を書き切るコツのようなものがあれば、ぜひとも教えていただきたく。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは。次の小説も、それと個人的にはMONKEYでの連載も、楽しみにしています! 
(いちる、男性、43歳、会社員)

最初に書いたものを読み返して、がっかりすることは、僕にもあります。でも最初から良いものが書けるわけはないので、それを「村の鍛冶屋」のようにこつこつと我慢強くトンカチ仕事をして、うまく直していくことが必要になります。何度も何度も書き直しているうちに、だんだんかたちが整ってきて、自分の思うようなものになっていきます。そういう流れをまず作っておいてから、先に進めばいいんです。ちょっと書いて「こりゃだめだ」と思って放り出していてはだめです。努力しなければ。文章というのは努力してうまくなるものです。最初からうまい人なんてまずいません。

村上春樹拝