屋台の店で

忘れえぬ猫がいます。20年前プレハブとビニールカーテンの屋台居酒屋を始めたばかりの頃、残飯目当てにたくさんの野良猫がビニールカーテンをくぐり、食洗機のしたのゴミ箱をあさっていた。ほとんどの猫が警戒を解かないままなのに、一匹の白黒の雄の仔猫だけはわたしに甘えてきた。可愛がり餌をやっていると、野良猫のガツガツしたところがなくなり、おっとりした成猫になった。ある寒い12月の日、一人で店に来た男のお客さんが熱燗を注文した。店にはその客しかいなかった。次にそのお客さんを見ると、白黒の雄猫が差し向かいにちょこんと座っていた。すいませんと詫びると、客は一人で寂しかったから丁度よかっ たですと、猫を見つめながら言ったのでした。
( lily、女性、53歳、自営業)

そういう屋台には僕もぜひ行ってみたいですね。でももうないんですよね? 残念。

村上春樹拝