早稲田で学んだこと

村上さんへ
こんにちは。
いつも村上さんの小説を楽しんで読んでいます。ぼくは大学5年生です。ぼくはもう1年大学にいることにしました。旅行をして映画をたくさん見ていろんな本を読み好きな人と一緒にいたりして、質感のある生活をもう少しの間送りたいと思っています。
村上さんが学生生活を通して、学生結婚をしたり、カフェを経営していたりしたと読みました。その学生生活は一般的な学生より長い期間だったことも知りました。村上さんが大学で得たものはなんですか? いま振り返ってみると、何が重要だったと思いますか? 学生時代の村上さんを、いまの村上さんが感じるところってありますか? 
村上さんの学生時代のお話が聞きたいです。そして、ひとこと頂きたいです。
(ひろき、男性、23歳、大学生)

考えてみれば、僕は大学にぜんぶで七年いました。けっこう長いですね。途中でやめてもよかったんだけど、当時の早稲田大学は留年すると、とった単位分だけ授業料を払えばいいという親切なシステムで、それほどの経済的負担もなかったので、なんとか卒業しました。最後の方は、結婚もしていたし、仕事もしていたし、かなりばたばただったです。正直に申し上げまして、僕が大学で学んだことは、学問的にはほとんど何もありません。大学の授業は退屈だったし、あまり出なかった。それよりは街に出て、いろんな生身の人と触れあい、いろんなことを身をもって学びました。僕はあまりアカデミックなものには馴染めない性格みたいです。実際の生活の中で、頭をぶっつけたりこけたりしながら、実践的に学んでいくのが向いているみたいです。

村上春樹拝