文学賞に応募しましたが……

いきなり村上さんに相談させて頂きたいのですが、僕は本屋で働きながら、小説家になりたいと漠然と考えている24歳です。去年にやっとの思いで、極短いものですが、生まれて初めて小説を書きあげて、とある公募賞に応募しました。ですが、結果は二次選考どまりでした。自分としては、今までの自分の辛い境遇と折り合いをつけて、これからは希望を持って生きていこう、という意志を込めて書いたもので自信があったのですが、どうも上手く行かないものですね。せめて最終候補にまでは行きたかったものです。こんな風に気が沈んでしまった時、村上さんならどうやってまた次の小説にとりかかろうと気をふるい起こしますか? 
(A太、男性、24歳、書店員)

自分の書いたものを自分で評価するというのはとてもむずかしいものです。僕はずいぶん長くプロとして小説を書いてきましたが、それでも自分の書き上げたものに関して正確な評価をくだすのは至難の業です。とりわけ書き上げてすぐのときには。そういうときは、誰かの意見を聞くのがいちばんです。近くにそういう人を見つけるといいと思います。

相手が誰であれ、自分の作品を批判されると、たぶん頭にくると思います。でも批判されたら書き直せばいいんです。僕は批判されて頭にきたら、逆の方向に書き直します。「ここは短くした方がいい」と言われたら逆に長くする。「ここは長くした方がいい」と言われたら逆に短くする。でもそうやっているうちに、作品ってよくなっていくんです。不思議だけど。がんばってください。

村上春樹拝