旋律は底をついたのか

こんにちは。村上さんは、作曲ってされたことはありますか? 素人があまり浅はかなことを言ったら怒られそうですが、世の中には「うつくしい旋律」「胸をうつ旋律」、そういうのがすでにほとんど出揃っているんじゃないのか? とたびたび思います。どう思われますか? これ以降、あとはなにをやっても何かに似ちゃうってことは無いんでしょうか。
私は邦楽をやってたんですが、邦楽の古典ってずーっとずーっと、いろんな人が寄ってたかって同じのを演奏しても名演になるときはなるので、こっそり「もう古典だけでいいんじゃないのこれ」って思ってます。極端な意見なのでいままで人に言ったことは無いんですが……
(匿名希望、女性、39歳、無職〈専業主婦〉)

そうですね。音楽で僕がいちばん不思議に思うのはブルーズです。同じコードで同じことをやっているのに、人によってずいぶん音楽が違ってきますよね。「軽くブルーズ」と「深くブルーズ」の差が出てきます。セロニアス・モンクがブルーズを弾くと(よく弾く)、ブルーズなのにブルーズに聞こえない。逆にある人が演奏すると、ブルーズじゃないものがブルーズに聞こえてしまう。不思議です。

村上春樹拝