1995年に生まれて

初めまして。村上春樹さんの小説を高校生のときに初めて読み、それ以来大学生になってからいくつかの小説を読ませて頂きました。大学の講義内で村上さんの小説を扱わせて頂くことも多く、村上さんの考え方や小説そのものについてとても興味を持ちました。そういった中で浮かんだいくつかの質問をさせてください。

わたしは1995年生まれで、2ヶ月後には20歳になります。わたしの生まれ年は第二次世界大戦から50年経った年であり、またそんな年にもかかわらず阪神淡路大震災や、地下鉄サリン事件のような多くの人の記憶に残る出来事も起こりました。成人を迎える最近になって、その年に生まれたという意味でも、自分の命とか、未来とかそういうものに対して何か意味があるのかもしれないと思うようになりました。村上さんの作品『神の子どもたちはみな踊る』や、『アンダーグラウンド』では震災とサリン事件がテーマとして扱われています。また、戦争についても『ねじまき鳥クロニクル』などでは関連する話題が登場します。村上春樹さんから見て、これらの大きな出来事は、これから先の世界にどう関係していく、あるいは関係していくべきだと思いますか。また、それらが起こったあとで生きる今のわたしたちのような世代に対し、何か想いはありますか。また村上さんはわたしたちのような世代を見て、どんなことを感じますか。教えて頂きたいです。

最後に、いつもたくさんの発見と、震えるほどに惹き込ませてくれる小説を世の中に届けてくださることに感謝しています。いつもどんな頭の中でどんなことが起こっているのか覗いてみたいとさえ思っています。自分でもこんな言葉を生み出せるように精進しつつ、これからも村上春樹さんの多くの作品を読んでいきたいと思っています。ありがとうございました。
(望未、女性、19歳、大学生)

十九歳なんですね。当たり前の話ですが、僕にも十九歳のときがありました。世の中が今にもひっくり返ってしまいそうなたいへんな時代でした。でも世の中というのは、そう簡単にはひっくり返らないものです。僕はその時代に、人生のうちでいちばん大事なことを「資料」としてたくさん取り入れたような気がします。その資料を解析するのに、とても長い歳月がかかりました。だから今のあなたにとって一番大事なことはとにかく、あなたにとっての大事な資料をたくさん取り入れて、丁寧に保管していくことだと思います。それがどのような意味を持つかなんて、あとでゆっくり考えればいいのです。今はとにかくたくさん本を読んで、できるだけいろんな人と出会って、できることなら深く恋をして、困ったり、わけがわからなくなったりするといいのではないかと思います。僕もそうしてやってきたから。

村上春樹拝