村上先生、教えてください!

村上先生、四つ教えていただきたいんですが、一番目は君が書いたすべての“ボク”のうち、どの主人公は最も君自身に似ていますか? そして君自身と夫人をモデルとなっている小説はいくつありますか? 二番目は“男の子”はいつ“男”と言えますか? 村上先生はどんなことで一人前の人になったのか? 三番目は女抜き(あるいは女のいない)生活20代の男にとっては失敗した生活ですか? 四番目は最近パリで起こったフランス紙襲撃テロ事件について、もちろんテロ攻撃はひどい行為ですが、CHARLIEの風刺画のような“表現の自由”は保障されるべきかどうかどう思いますか?
以上です
「私は日本語を勉強してるので、不敬あるいは変なところがあるかも知れない。ご勘弁ください(^0^)」
(GEGE、男性、23歳、学生)

おめでとうございます。あなたが記念すべきメール一号です。だからお答えしますが、四つは多すぎるので、ひとつだけ答えます。最初の質問ですが、僕の小説に出てくる一人称の僕は、僕に似ているところもありますが、似ていないところの方がずっと多いと思います。そしてそれぞれの作品によって、似ているところ、似ていないところは少しずつ違ってくるような気がします。というか、それらの僕は「僕があるいはそうであったかもしれない可能性を持った僕」と考えてもらったほうがいいかもしれません。英語で言う「仮定法過去完了」ですね。「The one I could have been, if......」ということです。そういう仮定法を試せるところが、小説を書くことの楽しみかもしれません。現実にはそんなことはできないから。

村上春樹拝